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2019年11月7日 (木)
カテゴリ:大学入試改革の傾向と対策「数学編」
今村塾の塾長の今村です。今日は英語の民間試験導入の延期によって注目されている「大学入試改革」について、私なりにまとめたことをお伝えしたいと思います。特に変更点が目立つ「英語」「数学」「国語」についてシリーズでお話します。今日は数学です。
1、共通テストが始まるのはいつ?
2021年度(令和3年度)大学入試より、センター試験が廃止され「共通テスト」がスタートします。現在、高校2年生の子どもたちからの変更です。
センター試験はとてもよくできた入試制度だったのですが、暗記に頼った勉強ではなく、子どもたちが社会に出た時に通用するような様々な力をつけて欲しいということで入試の出題傾向を変えなければならず、センター試験から共通テストへと生まれ変わることになりました。2、数学はどう変わる?
採点が大変なこともあり、今までのセンター試験のようなマーク式の問題が中心となります。記述問題も数学ⅠAで3問出題される予定です。
ただし、今までのセンター試験と違う傾向の問題が出題されます。
大学入試センターが発表している「共通テストの問題作成方針」を見てみると(以下、大学入試センターの「令和3年度大学入学者選抜に係る大学入学共通テスト問題作成方針」より抜粋)
「数学的な問題解決の過程を重視する。事象の数量等に着⽬して数学的な問題を⾒いだすこと、構想・⾒通しを⽴てること、⽬的に応じて数・式,図,表,グラフなどを活⽤し、⼀定の⼿順に従って数学的に処理すること、及び解決過程を振り返り、得られた結果を意味付けたり、活⽤したりすることなどを求める。
また、問題の作成に当たっては、⽇常の事象や数学のよさを実感できる題材、教科書等では扱われていない数学の定理等を既知の知識等を活⽤しながら導くことのできるような題材等を含めて検討する。となっています。高校生や保護者にとってはこれでは分かりにくいですよね。
具体的にどんな問題がでるのかを見てみましょう。平成30年度に試行調査という「共通テストの実験」が行われ、その中でどんな問題がでるかが明らかになりました。例えば、以下の問題は数学ⅠAの第一問[1]の問題です。
上の(あ)が記述問題となります。集合の単元の問題で式と記号で答えさせる記述問題です。これは「数学的な表現を使って説明する」という力を試すための問題となります。
こういった問題は文章をきちんと理解して答える必要があるので、子どもたちは混乱しやすく、正しい答えが出てきにくい問題です。「必要十分条件」や「集合」の知識を問う問題が狙われやすいですから高校生の皆さんは要注意です。
この次の問題の[2]では、このような問題が出題されます。
パソコンの画面をイメージしたイラストとともに問題が出題されています。
デジタルネイティブの世代に向けた新しい傾向の問題ですね。
これからは「プログラミング的な思考を育てる教育」や「ICT教育(パソコンやタブレット端末を活用した教育)」が盛んになっていく傾向になるので、こういった問題が増えるでしょう。
さらに、この次の[3]では
このような問題が出題されました。出題方針にあった「日常生活の事象」を材料にした問題です。日常生活に出てくるものの中から少し無理やりではありますが問題を作成しています。
問題を読み、それを理解し、数学的な知識を使って表現するという力が問われます。当然、苦手とする子どもは多く、この問題の正答率は大学入試センターの予想していたものよりも低かったと想像できます。
以上のように共通テストでの数学はセンター試験と同じマーク式が中心でも大きな変化が予想されます。現在のセンター試験では、問題の解き方を順を追って当てはめさせるものが多く、解きやすい問題が多かったです。ただ、「計算力」がかなり必要で、時間が足りないケースがありました。
一方、共通テストでは、おそらく
・問題を読んで理解するのに時間がかかる
・問題の意図を理解することができない子どもが増える
・平均点が下がり、できる問題を確実に解けるようにしないといけない
・センター試験と比べて計算量は大きく減るので、計算が早くなくても問題がなくなる可能性があるというような今までとは違う部分で苦戦する子供たちが増えそうです。
3、共通テストに向けた対策とは?
新しいテストなので難しいところですが、試行調査の問題と似た傾向であるならば対策を考えることができます。まずは試行調査での平均点の様子をご覧ください。(以下、大学入試センターの資料より抜粋)
85点満点で平均点が25点というテストでした。記述問題をいれると100点満点になるのですが、それでも100点満点で27点くらいの平均点でした。
「あなたは100点満点で27点のテストを想像できますか?」
学校のテストではなかなかないですよね。(私の高校時代に数学Ⅲで平均点が16点という定期テストがありました。30点以下は全員赤点の高校だったので、受験者の9割が赤点という衝撃的なテストでした)
学校のテストでは考えられないですが、実は大学入試の国公立2次試験や私立大学の一般入試では珍しいこともありません。高校生の中には誤解している子もいるのですが、大学入試の数学は
「難問が解けなくても問題なく合格する」
「合格者の中でも難問を解けている生徒はほとんどいない」
「100点満点中50点でも上位1割くらいに入る」という事実があります。ビックリしますよね。でも事実です。
ではどこで差がつくのでしょうか?それは
「応用問題ではなく、基本問題・標準問題ができるか」
つまり
「できる問題が確実にできるかどうか」
ということなのです。
以上のようなことから共通テストに向けてできる対策をまとめます。① 数学の基礎学力をきちんと身につける
計算が速く正確にできないのに応用とか思考力とか言っている場合ではありません。教科書の内容をまずは確実に速くできるようにしましょう。教科書の内容をきちんと理解しているだけでも「共通テスト」では有利になります。
教科書の中にでてくる公式がたくさんありますが、共通テストでは教科書にでてくる公式の「証明」が出題されることが濃厚です。そのため、公式を習ったら
1、公式を使って問題を解いてみる
2、公式が自由に使えるようになり、完全に覚える
3、公式の証明をしてみるという流れで学習していくとよいです。
公式の証明の仕方や過程は、面倒なことや難しいこともありますが、必ず数学の他の単元を解くときに生きてきます。また、ミスをした分だけ合格が遠ざかっていくと考えてください。ミスを減らす努力が必要です。ミスには2種類あっていわゆる「ケアレスミス」と数学の知識
や考えを間違ってしまう「思考のミス」です。このうち「ケアレスミス」をなくすように努力しましょう。
ミスをしたときには「なぜミスをしたのか?」「どうしたらミスがなくなるか?」をきちんと考えながら次に生かして下さい。2、100点満点中50点を目指す
試行調査の平均点の分布を見ると明らかなのですが、試験が子どもたちにとっては難しく感じる問題になっているので、まずは半分できるように目標を決めましょう。平均点が大きく変わらないと予想されるので、50点でも上位になれます。問題の前後半に関わらず、できる問題を確実にできるようにしましょう。
今後の共通テストの模試で「100点満点で40点」くらいだったとしても「けっこうできている!!」と前向きに考えてください。
入試で目標点を高く設定しすぎると結果がよくないことが多いです。自分に過剰にプレッシャーをかけることとなるので、少しでも分からない問題があるとパニック状態になる可能性があるからです。※勉強の過程では「高い目標」を設定することはよいことです。あくまでも試験の点数の目標の話です。
3、図形の力をつける
新しい「共通テスト」では、計算の量は減少するのですが、図で表したり、表で表すことは増えることになります。
子どもたちは、なぜか図形に対して苦手意識を持つ子が多いです。
また、苦手な子ほど問題を解く過程で図を書いたり、表を書いたりすることをめんどくさがります。問題を解くときに図を書くことを習慣にして勉強するとよいでしょう。
「図を制する者が共通テストを制す!」
ということになるかもしれませんね。
4、問題に慣れる
今後、様々な形で「共通テスト」の出題傾向に合わせた問題を解くことになります。
・模試
・共通テスト対策の問題集
・市販される予想問題などがありますので、とにかく問題形式に慣れてください。
初めてこういった問題を解くとできない子が多いですが、慣れていくと必ず解きやすくなります。意識してたくさん問題を解いてくださいね。問題の傾向を見ると「難しい高校入試の問題」に似ていることがあるので、難易度が少し高い「高校入試の文章問題」を解いてみるのもよいでしょう。
以上が新しくなる大学入試の数学の対策となります。
今後もまた傾向の変更があったら報告したいと思います。
皆さんの参考になっていると嬉しいです。愛知県美浜町の個別指導塾 今村塾
塾長 今村英之
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